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第2の門
「さあ、上がって。」
 エナタンは寒さに震えながらくしゃみをした。
「畜生!死んでいるならどうして寒さも水の冷たさも感じるんだ!これじゃ生きているのと変わらないじゃないか!」
 ホロンは目を細めた。
「今のが第2の門だ。」
「今度はなんだ?地獄でも凍え死ぬのか?そしてまたさらにその下の地獄へでも落ちるっていうのか?」
 ホロンは低くつぶやいた。
「もうすでに自分の門を開いているな。気がつくがいい。」
 エナタンはホロンが多くを語らず先へと急ぐのを黙って追いかけた。
 人がいた。
 面白くなさそうな顔をしてぶつぶつとつぶやいている。
 何かに文句を言っている事だけは分かった。
 近づいてみてエナタンはある言葉に反応してその男を見た。
「おまえは何様だ。」
 その男が自分の方を向いて言っていると感じた。
 男が牙を向いて突進してくるのをすんでのところでかわした。
「なんの文句がある!」
 男はつばを吐いた。
「お高くとまるな。見下しやがって。」
 掴み掛かって来た。
 エナタンは思わず男を殴った。
 倒れ込む男を見ながら、ハッとした。
(同じ光景を見た・・。)
 その同じ光景で倒れたのは“アレク”だった。
「アレク!?」
 ホロンは叫ぶエナタンの腕を取って、すばやくその男から遠ざかった。
 ホロンはエナタンを引きずりながら、眼を細めてつぶやいた。
「その通り。今の男はアレクだ。アレクのたましいの所在だ。ここは地上とシンクロしている。」
 そして振り返ってエナタンに告げた。
「そして、きみのたましいの所在でもある。」

 岸辺の浜から洞くつに入っていく。
 また人がいた。
 女はやはり眉間にしわを寄せてぶつぶつと何か言っている。
 すれ違おうとした時、女の肩とぶつかった。
 女は形相を変えて叫んだ。
「何しやがる!あたしが歩いてる邪魔をするな!」
 エナタンはかっとなって女を突き飛ばした。
「おまえこそ前を見て歩け!」
 すると女は野獣に豹変した。
 牙を向いて吠え、エナタンを噛み砕こうとした。
 ホロンが間に立った。
 不思議なことにホロンが止めると女はまた再び人の顔をして、ぶつぶつと文句を言いながらあさっての方へと歩いていった。
 ホロンは息を吐いた。
「わかったか?ここは不満の門だ。何を見ても不平不満ばかり言っているとああして牙が育ち、人であることを忘れる。自分の牙も触ってみよ。」
 エナタンはハッとして自分の歯を触った。犬歯のように先が少し尖っていた。
「人であることをやめたなら、もう進むことなどしない。ここで永遠に文句を言って、決して満たされることはない。」
 エナタンは憑き物が落ちたように静かになった。
「触ってみよ。」
 もう一度うながされて自分の歯を触った。
 元にもどっていた。
 少し、分かってきた。
「人間のあらゆる側面がここにはあるというのか?」
 ホロンはうなずいた。
「それがひとつひとつの門なんだな?」
 ホロンはじっとエナタンの瞳を見つめた。
「どこで進むことをやめることになるか。それはその人間を縛る永劫からの鎖だ。だが、きみは行かなければならない。なぜなら人間がこうなったのはきみのせいでもあるからだ。」
 エナタンは雷に打たれたようにホロンの言葉に衝撃を受けた。
「そのことをオレは知っている。なぜだ?」
「行こう。」

 しばらく歩く間にもあちこちで文句を言う人間に出会った。
 文句の的にならないよう気配を消して進んだ。
 エナタンはホロンの背中にうっすら生えている紅いたてがみを見つめながら聞いた。
「どうして野獣のようなあの女を山羊のようなおまえがおとなしくさせることができたんだ?おまえは誰だ?」
 ホロンは振り返るとため息をついた。
「きみは質問が多すぎる・・。第3の門をくぐる心の準備は出来ているのか?言っておくが、くぐる度に心の闇は深くなる。」
 エナタンは黙った。
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