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光の名前
 エナタンとフェイは結婚した。
 ごく内輪だけで祝った。
 アンディはひどくはしゃぐかと思えば、急にふさぎ込んだりした。
「彼なりに環境の変化を感じてるんだ。」
 ヨキはそうエナタンに告げた。
 エナタンはアンディを呼び寄せ、念を押した。
「何も変わらない。きみは今まで通りわたしたちの大事な友人だ。遊びに来るんだ。」
「エナタンに子供が出来たらオレはそう大事じゃなくなるさ。」
「ばかだな。子供が出来て友人をないがしろにするやつがあるか。変に気を回すな。」
 だが、アンディはふっと寂し気に笑った。
 それはどこか運命を受け入れたような、大人の表情だった。
 エナタンは何も言えず、アンディを見送った。

 その晩も更けて、フェイも寝息を立て始めた頃、エナタンは寝つけずに書斎の椅子に座った。
 久しぶりに何かを書こうとペンの蓋を取った時だった。
 振り返った。
「ホロン・・。」
 天使の姿をしたホロンが、ソファーに座っていた。
「なぜ、きみがここに?」
「わかってるはずだ。」
「・・。」
「きみは充分やった。地上での日々を今度こそ充分とね。」
「・・ああ。だが・・。」
「フェイとの暮らしがこれからだというんだろう?」
「・・。」
「きみにはこれ以上ない地上のしあわせを手放すという体験が残っている。」
「フェイをひとりにするのか?」
「いや。」
「・・。」
「彼女もきみとの人生を充分やったさ。彼女にはまた別の人生が用意されている。」
「・・そうか・・。」
「切ないもんだ。人生は。」
「ああ。」
 ホロンはエナタンがペンを持とうとしていたことに気づいた。
「書こうとしていたのか?」
「・・ああ。」
「何を?」
 エナタンはしばらく考えて、首を振った。
「いや。もうないことに今気づいた。わたしの人生は『LIGHT GATE』を残していくことにあったんだ。」
 ホロンは微笑み、うなずくと夜更けの霧に静かに融け込んでいった。

 それから1週間。
 エナタンは静かな日々を味わった。
 朝目覚めるとフェイがそばにいて、一緒に食事をし、夕暮れをともにする。
 エナタンは忘れないように、その赤々と映える夕陽を心に焼きつけた。
 いつものようにたわいない話をし、ヨキと会い、アンディと遊び、ルーサーを呼んだ。
 誰もエナタンの様子に気づかなかった。
 エナタンは誰かに会う度に心でつぶやいていた。
(ありがとう。なにもできなかった。)
(ありがとう。言葉にはできない。)
(ありがとう。忘れない。)
(ありがとう。また会おう。)

 その晩フェイが言った。
「エナタン。もしも子供が出来たら、なんていう名前にする?」
 エナタンは微笑して、フェイに返した。
「きみがつけたらいい。」
「じゃあ、男の子だったらわたしがつけるわ。女の子だったらあなたがつけて。」
「女の子・・。」
「いいのがある?」
「いや。」
「言ってみて。」
 エナタンは少し笑って、言った。
「フィオナしか思いつかなかった。」
「いいじゃないそれ!」
「男の子なら?」
「ルシフェルにするわ。」
「えっ?」
「ルシファーになる前の光の名前よ。あなたの本来の名前よ。」
 エナタンはフェイを抱き寄せて万感を込めてその耳にささやいた。
「ありがとう。」
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