CALENDAR  ENTRY  COMMENTS  CATEGORY  ARCHIVE  LINK  PROFILE 
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

- - -
3人目の友達
 セントラルパークで春風に吹かれていた。
 いつの間にか眠りこんだらしい。
 顔の上に何か降って来た。花の香りがする。
 笑い声が響いた。
「アンディ。」
 顔中にちりばめられた花びらを払いながら苦笑した。
 今日は久しぶりにフェイとアンディと骨休めに来ている。
 アンディはずいぶん落ち着いてきた。
 施設長のアナ・ロランはうれしそうにエナタンにそう報告した。
 起き上がったエナタンの目に飛び込んできたのは、ヨキの姿だった。
 ヨキはもうひとりと連れ立っていて、こちらを見つけると手を振った。
「ヨキ・・。」
「見つけた。今日はここにいるって聞いてたからな。もっともこの広いセントラルパークで見つけられるとは思ってなかった。」
 エナタンは立ち上がると、ヨキの連れてきたもうひとりに笑いかけた。
「やあ。」
 手を差し出して握手する。
 ヨキがつけ足した。
「ボーダー社まできみに会いに来たんだ。きみに話は聞いていたから連れてきた。」
 ルーサーは陽光にまぶしそうに顔をしかめながら小さく会釈した。
「誰?」
 アンディが無邪気に聞く。
「ルーサーだ。3人目の友達だよ。」
「友達?」
 アンディとルーサーは同時にいぶかしげな声を上げた。
 アンディはぶすっとした顔をし、ルーサーもあきれたような顔をした。
「いつから?」
「今からだ。」
 エナタンはニヤリと笑って聞いた。
「どうして会いに来たんだ?」
「どうしてって・・。」
「ほら。」
「?」
「意味もなく会いに来るのは友達ってことだ。なあ、そうだろ?」
 1番目の友達に向かって相づちを求めた。
 ヨキは可笑しそうにうなずいた。
「あんたにも色々友達が出来たか。」
「やたらに友達作るなよ。」
 アンディが口をとがらせる。
「しかたないだろう。彼もおまえもオレによく似てるんだ。」
「どこが!オレはこいつになんか似てないぞ!」
 アンディはルーサーを指差すと、そう叫んでフリスビーを持って駆けていった。
 ニヤニヤと笑いながらエナタンはルーサーの方を向いた。
「面白いやつだろう?なんとも憎めない。」
 アンディは自分を見てくれないことに気づいてエナタンの元に再び駆け戻って来た。
 ルーサーは微かに上の空な物言いた気な素振りを見せた。
 エナタンは敏感に感じ取って、聞く姿勢になった。
「その・・。まだ、言ってなかったんで・・。」
「・・?」
「あなたを刺してすみませんでした。」
 そう言って頭を下げた。
「こいつか!」
 アンディはかっとなってルーサーに飛びかかった。
「やめろ!」
 エナタンとヨキがアンディをルーサーからはがした。
 ヨキが抱え込んだ腕の中で暴れている。
「ばかやろう!大ばかやろう!こいつ!殴ってやる!」
「よせ。謝りに来たんだ。聞いただろう?ルーサーは謝っている。」
 ヨキがアンディをなだめている。
 アンディは涙をにじませながら叫んだ。
「エナタンを死なせたらオレが許さない!」
 ルーサーはアンディの叫びに立ち尽くしていた。自分がしたことをあらためて噛みしめざるを得なかった。
 こればかりはこたえた。
 アンディは小さな体全身で叫んでいた。こんないのちに叫ばせるものを自分は傷つけたのだ。自分がデイジーを奪われた時の痛みを思い出した。
 エナタンは静かに笑みを浮かべながらアンディに向き合った。
「アンディ。安心しろ。」
 ルーサーの方を向くと、彼をほぐすように少しおどけた表情で紹介した。
「紹介しよう。1人目の友人ヨキ。そして2人目の友人アンディ。そしてきみが3人目だ。」
「趣味わるいぞ!」
 アンディが叫ぶ。
「ハハハハハ!」
 エナタンとヨキは大声で笑った。
「こっちでランチを一緒に食べましょう!」
 フェイが面白そうに笑って呼んだ。
 アンディの言葉が痛かったのか、ルーサーはおとなしかった。
 エナタンはルーサーを気づかって話しかけた。
「学生かい?」
 うなずく。
 ヨキが明るく聞いた。
「何を学んでいるんだ?」
 ルーサーは自嘲気味に苦笑すると、小声で答えた。
「臨床心理学。」
「じゃあ、心理学の先生かカウンセラーにでもなるの?」
 フェイが聞く。
 ルーサーは首を振った。
「障害事件を起こして、人の痛みを聞くもないでしょう。」
「いや。」
 エナタンがシナモン・ティーから口をはずして首を振った。
「きみは大事なものを失った痛みを知ってる。そしてさらに今きみは人を傷つけてしまった人間の痛みにも寄り添えるじゃないか。きみのような人間こそカウンセラーになったらいい。」
「えっ?」
 ルーサーは顔を上げて意外だという表情をした。
「どんな人間にも痛みはある。」
 ルーサーは再び目を落とした。
「そうか・・。」
 しばらく沈黙して、つぶやいた。
「あなたにも、あったんだ。」
 ヨキとフェイは顔を見合わせて微笑んだ。
「オレはあなたをほんの一面からしか見てなかった。・・いや、あなただけじゃない。きっと世界もほんの一面からしか見てなかったんだ。」
「きみ自身もだよ。」
 もう一度顔を上げてルーサーはエナタンの顔を見た。
「きみは白でも黒でもない。灰色だ。灰色は白にも黒にも近くなれて、どこまでも広大だ。きみの可能性は限りがないんだよ。」
「可能性に乾杯!」
 ヨキがビールを掲げた。
 ルーサーはやっと笑った。
 それぞれが手に持ったものを青空に掲げた。
Story comments(0) -
スポンサーサイト
- - -
Comment








<< NEW | TOP | OLD>>