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 ホロンと、人々と、天を舞った。
 エナタンには翼はないのに、ホロンに手をとられて上昇していた。
 雲の上に出た。
 そこは宮殿のような光り輝く場所だった。
 透き通った大理石のような床が一面に広がっている。
 光に満ちていた。
 見覚えのある人物が近づいてきた。
 父と母だった。
「エナタン・・。」
 母はそうつぶやいてただ抱き締めた。
 父もエナタンの肩を抱いた。
 生前はふたりともそういう情愛を見せることはなかった。不器用に振る舞い、エナタンは満たされぬ想いを抱き続けてきた。
 だが、実はそうではなかったことをその抱擁で一瞬にして悟った。
「なぜ・・。これだけの愛を表現してくれなかったのですか?わたしは誤解していた・・。」
 エナタンを導いた光るミカエルは語った。
「それはきみも同じだ。みな、足枷を負いながら地上でそれを表現するというプラクティスに赴く。足枷を持たずに地上には生まれない。みながほんの少しづつお互いにそのことは思いやることでその足枷は融けるのだ。それをきみはしただろうか?」
「・・いいえ・・。」
「責めているのではない。きみも、きみの父も母も、同じだということを思い出しているだけだ。きみが敵だと思った相手も、憎んだ相手もだ。ほんとうの相手をここで知る。愛に満ちた、きみを愛している相手を。きみが愛したかった相手を。」
 エナタンは泣き崩れた。
 自分が人を愛したかったことを、いのちの真ん中で悟った。
 どうしてあそこまで愛することから門を閉ざしたのか。
 そればかりか、相手を抹殺することまで思い、実行した。目の前の愛に満ちた父と母のほんとうの姿に触れ、切なさに赤子のように懺悔に暮れた。
「ここが、第10の愛の門だ。」
 ホロンがささやいた。

 燕の声がして振り返った。
 一羽の白い燕がエナタンの頭上を舞った。
 エナタンはあっと声を上げた。
「燕よ。おまえか?」
 燕はエナタンの目の前で輝く女性の姿になって降り立った。
 その人は美しい意志のある顔をしていた。
 子守唄のように、この上なく美しい調べが聞こえてきた。白い人々が無数にエナタンの周りを取り囲み始めた。
 エナタンの全てを受け入れてその歌を捧げている。
 さっきの燕の女性はひときわ澄んだ歌声でエナタンの胸を打っていた。
「あなたの名は?」
「フィオナ。」
「会ったことがある・・。」
 フィオナはうなずいた。
 その時、エナタンは自分の背に黒い翼が生えていることに気づいた。
 そして、石のように成りかけている足にも。
 フィオナはその醜い翼にもいとしげに触れた。
「さあ、第11の門が開いた。」
 ホロンの声がした。
 その調べはその固い石のような足を構成するひと粒ひと粒の原子にまでしみてくるような微細な振動を持っていた。
 怒りを感じた時の不快感とは対極の、とろけるようなその波動は、凍った足を融かすようだった。
 黒い翼からはまるで枯葉のように黒い羽根がさざめいては抜け落ち、その下から生まれたての白い羽根が柔らかく現われてきた。
 エナタンは自分の白い羽根をひろげてみせた。フィオナは微笑んでいた。
 ホロンを見た。
 ホロンは一筋涙を流している。
「ここで、すべて、癒される。本来の自分にもどるのだ。癒しの門だ。ようやくもどったな。ルシファー。」
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