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黒い天使
 転げまろびつつ、岩盤を行けるところまで走った。
 とにかく逃げたかった。
 この腹の立つ運命から。
「エナタン!」
「畜生!オレの宿命なぞ誰が決めた!オレはそんなものに捕まりやしない!」
 だが、暗がりの中でエナタンは道を踏み外した。いきなり岩盤が途切れていた。
 その口を開けた空間の底に、溶岩が赤々と煮えたぎってエナタンを迎えた。
「わああああああ!」
 溶岩の直中に身を投げ出された。
 全身を言語を絶する衝撃が襲った。
 すぐに顔面も溶岩の下に飲み込まれた。
 肉体が感じることの出来る最大限の苦しみがエナタンを包み、溶かそうとしていた。
 すぐ横に何かが飛び込んだ。
 ホロンはエナタンを掴むと、さらにその溶岩の奥へと深く潜っていった。
 エナタンは自分の骨まで溶かされていくのを感じながら、少しでも早く自分の意識がなくなることだけを願っていた。
 溶岩流の流れは奥ですぼまっていた。
 その関門のようなところを溶岩とともに流れ出た。
 出た空間で、冷気に一瞬で冷やされて赤い溶岩は黒い粘液質のものに変化し、小高い山の上にぼとぼとと落ちる。
 エナタンとホロンは溶岩がクッションとなって山の上に衝撃も少なく落ち、その斜面を転がり落ちた。
 ほとんど骨と化したエナタンが、それでも苦し気にむせんでいた。
 ホロンはほとんど毛がなくなっていたが、無傷のままその転がり落ちた場所で静かに起き上がると、足をたたんだ。
「来たな。」
 これ以上ないくらいのひんやりとした声が、地に響いた。
「ホロン。よくやってくれた。」
 その声はエナタンにも声をかけた。
「おまえが今骨であろうとするのはわかった。だがそれは必要ない。起きよ。」
 エナタンはその声に起き上がった。
 すぐに、骨であった自分が肉をまとっているのに気づいた。
「・・死ねないという地獄か?しかも苦しみだけは毎回ありありと有る。」
「第5の門を超えた。」
 ホロンが言った。
 目の前にいるのは巨大な天使のような男だった。だが、たったひとつ天使と違うのは、黒い羽根を持っていることだった。
 しかもその羽根はぼろぼろで、飛べそうにはない。
「ようこそ。わたしであるおまえよ。おまえはわたし自身としてわたしの元から飛び立ったわが子。さあ、自らであるわたしを見よ。」
 エナタンはその聳える男を見つめながら意味もなく泣けてきた。
「どうした?」
「おまえは落ちたのだな?」
「そうだ。」
「どうしてか知っている。思い上がったからだ。」
 男の目は妖しく光った。
「思い上がるだと?それは力なき者があるように思い込み、そう振る舞うことだ。わたしは真に力ある者だ。」
 彼が息を吐くたび、そこは凍った。
「やめよ。」
 ホロンが言った。
 男はふと我に返ったように瞳の妖しい光を収めた。
「エナタンに説明せよ。」
 さらにホロンがうながした。
 男は深い息を吐いた。その息は凍っていなかった。
「エナタン。おまえの名は暗喩だ。サタンエナジーから来ている。」
「どういうことだ?」
「サタン。それはわたしの別名だ。」
 エナタンは息を飲み込んだ。
「わたしは天使だった。高い天上界にいた。だが、おまえが言ったようにわたしは落ちた。おまえは知っているはずだ。おまえはわたしだから。」
 その瞬間、エナタンはまっ逆さまに地に落ちる感覚をまざまざと思い出し、絶叫した。
「ああああっっーーっ!」
 目眩がして倒れこんだエナタンをホロンが支えた。
 封印は解けた。
 エナタンの原風景が生々しく展開され始めた。
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